こんにちは。どうもです。
今日はちょっと小論を書いてみようかと思っています。
テーマは、エロゲが切り開いたストーリーについて、です。
といっても、特定の作品に着目した話をしたいわけではありません。
私が今日取り上げたいのは、マルチエンディングというエロゲの本質的な特徴が、
ある種の物語を語る欲望を刺激し続けているという話です。
結論から言いますと、エロゲは「ループする物語」についての語りを
発達させてきました。物語がエンディングまでいくと、それが冒頭に繋がるような構造。
作品によってはそれが永遠に繰り返すという物語構造と、
その物語構造から抜け出すということ自体が目的の物語構造とを
併せ持っている場合があります。
そういう物語は、これまでにも映画や、小説などでも繰り返し扱われてきていた
ことを否定する趣旨ではありません。
ただ、エロゲというメディアは繰り返しプレイを前提としています。
その結果
A→A→A→・・・
という程度の物語構造ではなく、
A→A'→A''→A'''→A''''→・・・
といった少しずつ変化しながら動いていく世界、あるいは
A→A'→A''→A'''→A''''→B→B'→B''→C
といったようある閾値によって世界が急激に変化し
繰り返しの結果としてAの世界からBの世界に遷移し、
そして、さらにCの世界へ遷移する、といった
ループしながらも複雑に変化していく物語世界といったものを
自由に描くことができているのです。
このことの意義をもう少し詳しくみていきたいと思います。
そもそもエロゲのプレイヤーの体験は、メタレベルでは
A→A'→A''→A'''→A''''→・・・
という感じになります。
たとえば同級生2で考えると
いずみ→唯→洋子→・・・
といった感じになり、同じ世界でありながら攻略対象のキャラが
変わるごとに、異なった物語を体験することになります。
そこで、これは東浩之の指摘なのですが、とってもクレバーな人があらわれて
A→A'→A''→A'''→A''''→・・・
という物語の遷移自体に、メタレベルでの物語をくっつけてみようという
発想を得るに至ったのです。
すごく簡単に言うと、主人公は何らかの目的を達成するためAからA''''までのルートを
体験する必要があり、A→A→A→A→A→・・・といっても永久に
Aの世界から抜け出せないが、A→A'→A''→A'''→A''''と
遷移するとBの世界にいける、といった物語をくっつけてみたりするわけです。
東によれば、このようにメタレベルに物語を構築して繰り返しプレイそれ自体に
物語性を持たせるという方法論のはしりはelfの「この世の果てで恋をうたう少女 YU-NO」
だったとのことですが、この方法論の究極の到達点としてはKEYのCLANNADを
上げておきたいと思います。
このゲームではA→A'→A''→A'''→A''''とくるとBにいけるのですが、
Bは悲劇的結末になっているうえに、Bが終了すると
Aの世界での冒頭にまで戻されてしまいます。
(正確に言うとタイトル画面に戻る)
「物語がはじまるあの日に戻って、この子を助けなさい」みたいに言われて。
こうして、A→A'→A''→A'''→A''''→Bときた自分のプレイ体験が、
メタレベルのストーリーでは・・・→A→B→A→B→・・・とひたすら
繰り返してきたストーリーの一部分であることが顕になります。
さらに、このゲームは春樹の「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」を
インスパイアしていて、AおよびBの世界をプレイしている間に度々
「幻想世界」なる並行世界(?)の情景が唐突に挿入されてきて、
そこでルートAでの選択がBの世界に影響を与えていることが示唆されています。
(ちなみにこの場合のルートAというのはルートA'、ルートA''と区別される意味でのAで、
エロゲに詳しい人用に言うと、Aの世界でのメインヒロインルートを意味します)
で、これらの情報から、
プレイヤーに求められるのは悲劇的なエンドであるBを回避してAからBを通って
希望のあふれたCに抜け出すために、
Aでのチョイスを調整してB'およびB''を体験することであることに
うすうす気づかされることになります。
これも明示的には語られませんが、ルートAでの選択がBの世界に影響を与えていること、
およびゲームシステム上の関係でなんとなく示唆されています。
以上の物語構造を図式的に示すとこうなると思います。
A(0)→A'→A''→A'''→A''''→B→A(1)→B''→A(2)→B'''→C
とまあ記号化するとそんな感じなのですが。
結局、物語はプレイヤーがCに到達するために
A(0)→B、A(1)→B''といった世界を体験し、
あるいはA'、A''、A'''、A''''といったパラレルな世界を経験し、
そのようなサブ世界経験をメタレベルで蓄積してくことで
(具体的には光の玉を集めるというメタストーリー)
・・・→A→B→A→B→・・・→C
と、この循環する世界から抜け出すことができる、というものです。
実際にはもっとかなり洗練されたストーリーにのせてこれをやっているので、
興味あるひとはぜひ実際にやってみてほしいです。
ここでひとつ気づくのは、エロゲでメタレベルにも物語を用意しようとすると、
それは基本的に循環を前提とした物語となるということです。
CLANNADの先進性はA(0)→B、A(1)→B''といったより複雑な
階層構造を用意したことですが、A'、A''、A'''、A''''といったエロゲが
通常具備している「各キャラごとのルート」の並列構造においても
少なくともプレイヤーからの視点としては循環は存在していることは明らかです。
よってA'、A''、A'''、A''''を関連付けようとする視点は、
これらが循環しているという事実について自覚的となることは
無理もありません。
つまり、エロゲというメディアがこういう「循環」を語りやすいから
こういう物語が発達したというよりも、エロゲというメディアの存在と、
そこにメタストーリーを付与したいという発想が、世界の「循環」性を物語の
中核にすえた物語の誕生を刺激しているという側面が強いような気がします。
そして、「繰り返しの物語」はエロゲという自らの聖域において、
独自の発達を遂げてきたと考えることができるでしょう。
ここで培われたこれらの物語の蓄積は、これを語ることが可能な、
そして一般にも受け入れられるフォーマットを手にしたとき、
世界に衝撃を与えるような形でセンセーションを巻き起こすことになると思います。
いつになるかは分からないですけど・・・